カフェ椋今年最後のイベントは、寄席。
お招きしたのは、春風亭鹿の子さん。
鹿の子さんと出会ったのは国立の珈琲店ひょうたん島ですが、折から勤めだした、とある出版社の俳句月刊誌の仕事に、「面白い人はいないか」という要請があり、「若手落語家ではどうでしょう」と提案して、二年間の連載にご協力いただいたのでした。
真摯に芸の道に精進しているプロフェッショナル。
私はそういう人に惹かれます。
すこし話はとびますが、先日、取材のため能登・輪島の輪島塗の工房にお邪魔しました。そのときお世話くださった方のはからいで、沈金の職人さんにもお会いすることが出来ました。私は沈金という静かで華麗な工芸に目を瞠りました。「目をつむっていても出来る」と、そのかたはにこやかにおっしゃいました。
沈金だけではありません。すべての行程において、職人さん達の手は、繊細な工芸の仕事を、見事に正確にこなしてゆくのです。
職人を目指したいーーそんな胸底のうずくような思いが、私にはあります。
さて、出会ったとき娘さんだった鹿の子さんは、今、二歳の女の子のお母さんですが、寄席に出るときには、旦那様がお守りをしてくださるそうです。
鹿の子さんが二階の控え室で着替えをすませ、スタンバイしているあいだに、定員の13人のお客さんたちが集まりだし、少々遅れて「カフェ椋忘年寄席」は始まりました。
さて、いよいよ羽織を脱ぎすてての演目は「抜け雀」。
馬鹿正直な男と、天才絵師の話。
どういうわけか、出だしのあたり、絵師の風貌の描写、「ヒゲだらけの顔から意外と涼しげな目がのぞいている……」というくだり、ことに心に残っています。
はじめて聴きましたが、いいお話しでした。
……さて、そのあと、夜の更けるまで、鹿の子さんといっしょに和気藹々と囲炉裏を囲んだことは申し上げるまでもありません。
鹿の子さん、どうもありがとうございました!
そして、お越し下さった皆様、ありがとうございました!
昨日落語を聞いたときのような、あたたかーい気持ちで、よいお年をお迎え下さいますように。